カルテの裏側
診療の心得
2022年04月01日
診療中、患者さんの親から、この子はよく熱を出すが、異常ではないかと尋ねられることがある。その都度、かぜ症候群や五類感染症のいくつかについては、「感染はするもの、しかし、感染するたびに免疫が強化され、それも成長のうちです」と応えてきた。それは、感染したことを特別視することが感染症を忌み嫌うことになりかねず、ひいては感染症に罹った人に対する差別につながる、ということを止めたいという一念もあっての対応なのである。ところが、そんな私の診療スタイルを新型コロナ感染症は、すっかり壊してしまった。新型コロナ感染症に罹患すると、他の病原体とちがって、認知機能が低下することや、男性性機能が低下することも言われている。それが本当なら、それは人類の危機であり、一人の医師の手に負える相手ではない。そんな中、いまは科学に基づいた知識を患者さんに話し、現下で取り得る最適な防御を多くの人が成せるよう伝えることが医療者の務めだと思っているところである。