診療の中で
典型的FAIと診断されて
2023年05月26日
約1年前から、歩き始めると鼠径部が痛くなることが時々あった。夏になるとその頻度が増し、痛みが股関節にまで拡がってきたため、私の主治医である近くの整形外科で診察してもらった。そこでは、股関節インピンジメントの可能性があると診断された。これは、歩く際に大腿骨と骨盤が衝突するために痛みが生じるものらしい。
しばらくは、痛みがあったものの、そのままにしていた。しかし、今年3月になり、痛みが強くなり、普通に歩くことがむずかしく、びっこを引くようになった。痛む足をかばいながら石段を上がる際に、転んでしまったこともある。そんな経過から、再び整形外科を受診したところ、詳しく診てもらうよう指示をいただいた。彼の母校の後輩の股関節専門医を紹介され、過日診察してもらった。
診察した結果は、主治医の見立て通りであった。別名大腿臼蓋インピンジメントと称され、その英語の頭文字をそろえてFAIと呼ぶらしい。私の股関節の痛みは、典型的なFAIによるものと言われた。FAIは、今世紀に入ってから提唱された概念だそうだ。専門医は、この10年で確立されたと言っておられた。
病気をすると、まず診断をして、今後どうするかを決める、という手順を踏む。専門医は、手術による痛みの回避が最善といわれた。そして、彼の指示によって、この病気を知っておられる理学療法士にリハビリをお願いしたところ、うそのように痛みがひいた。しかし、毎日自分で続けることが大事、とも言われた。確かに、ちょっとサボって様子見すると、関節の痛みが襲ってくる。これはもう手術しなければ、「持病」となってしまうと観念している。
さて、手術をするか、あるいは、このままリハビリを続けて痛みを軽くするか、いずれを選ぶのかが目下の悩みである。近くの主治医は、生命に関係することではないから、わざわざ手術に踏み切ることはないのではと助言してくださった。それもそうだと思いながらも、痛む足を抱えて迷う毎日である。
いま私は、定期的に目薬をさしていることは、以前に述べた。これにリハビリが加わった。何ともはや、忙しくなったものである。誰かが言ったように、年齢を重ねることは、まさに忙しくなることなのである。しかし、忙しいと自分のことばかりにかまけていられない。痛みを覚える同類は必ずいる。その人たちに、少なくともリハビリを続けることで軽くなる、ということは伝えられるからである。患者となった医師の役割として。
そういえば、リハビリに不可能はないという文言が、リハビリに関係した学会が創立された頃にあった。そのことを自分の糧として、今日も励んでいる。